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――― 知らなかったんだ・・・。大切な女(ひと)を抱き寄せることがこんなにも簡単なことだったなんて・・・。
抱き締めていた腕を少し緩めて彼女の瞳を見つめた。
「なつ・・・?」
ゆっくりと大切にその名を呼んだ。
「・・・・・・りゅう・・・」
まるでそこに込められた気持ちを受け止めたかのように、彼女は潤んだ瞳でゆっくりと答えた。
きっと彼女も長いこと同じ気持ちだったに違いない。今ならそれが分かるのに、俺は一体どれほどの遠回りを繰り返し、時間を無駄にしてしまったんだろう。
彼女と出会ったのは、もう随分昔のことだった。俺はまだこどもでその気持ちの名前すら知らなかった・・・
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