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閑静な住宅街に少年が二人、ランドセルを背負って並んで歩いている。新品だった頃には黒光りしていただろうそれが傷だらけで白っぽくなってしまっていることからも二人のワンパク振りが垣間見えるようだ。
「なぁリュウ!3組の山下って可愛いよな?」
下校途中いきなり大きな声で尋ねてきたのは竜斗の親友・翔太だった。
「はぁ?おまえまたその話かよっ・・・。」
半ば呆れ気味に竜斗は答えた。
その胸には「5年2組 坂本竜斗」という名札が留めてある。
3組の山下とは二人が通う小学校で同じ学年の女子の名前だ。どうやらかなり可愛いらしく、最近男子の間で女子の話になると、必ずその名前が出てきた。そのせいで竜斗も名前と顔は知っていたが、特に興味はなかった。
「だってさぁ、気になるんだもん、しょうがないだろう?」
そう言う翔太の声は情けなさを帯びていた。
「すれ違う度にこっちを見てる気はするんだけど、どうーも俺とは目が合わないんだよね・・・」
そう呟きながら翔太は竜斗をちらりと盗み見た。
「・・・興味ねぇ。」
ぶっきらぼうにボソリと竜斗は言った。
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