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ここ最近繰り返される翔太とのこの会話に飽き飽きしていたのだ。だから、翔太の視線を意識しつつ、できるだけ興味の無さが伝わるように言ったつもりだ。翔太が竜斗の動揺を誘おうとしていることは明らかだった。
確かに、ここ最近視線を感じて振り向くと話題の少女と目が合うことが数回あったが、竜斗自身そのことに何も感じていなかったし、ただの偶然だと信じて疑わなかった。そのことを翔太に言ったところで、山下はおまえに気があるんだ、と更に翔太が情けない声でうなだれるという結果に陥るだけで竜斗には何の得にもならないことは既に学習済みだった。
そんなことよりも竜斗の興味は今日あとどれくらい遊ぶ時間があるかということだ。
「そんなことより、翔太、今日は何する?野球かサッカーか・・・それとも俺んちでゲームでもすっか?」
話題を変えようとした竜斗だったが逆効果だった。
「そんなことってことはないだろ!俺は真剣なんだから!」
翔太はふくれっ面でそう言った。
「だってさ、興味ねぇったらねぇんだよ!それより俺はおまえと遊ぶことの方が大事なんだから!」
自分との時間が大切!・・・そう竜斗に真剣な眼差しで言われてしまったら翔太も悪い気はしない。
「竜斗・・・んーそっか、それなら仕方ないか・・・じゃあ今日は公園で野球にしようぜ!昼休みサッカーで負けっぱなしだったからな。今度は野球で勝負だ!」
コロッと態度を変えて、遊びの話題になった。どうやら竜斗が3組の山下には全く興味がないということが伝わったようだ。
「オッケー!じゃぁ、一回家帰ってから公園にダッシュな?」
「あー、でも雨降るかなぁ?」
立ち止まり黒い雲が流れ始めた空を見上げて翔太が言った。
「じゃぁ、降り出したら俺んちに移動しようぜ。」
「了解!じゃ、後でな!」
分かれ道に差しかかり、二人は手を振って別れた。そこからはランドセルを揺らしながら、お互いダッシュで家まで帰る。
(・・・翔太ってタンジュン。)
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