一真の章

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「そう、あの河原奈都だよ。」 そう答えたのは高三の学年主任を務める真壁先生だった。 彼も今朝のニュースを見たのだろうと会話を聞いていた一真は目を見張った。 「昨夜俺の家内が勤める病院に運ばれたみたいでな…今朝ニュースに驚いていたところに夜勤明けの彼女が帰ってきてちょっと様子を聞いたんだ…」 そこまで聞いた一真は席を立って真壁先生の方へと駆け寄った。 ―――――その1時間後、一真は車で隣町の病院へと向かっていた。 真壁先生の奥さんは隣町の総合病院で婦長を務めている。 昨夜河原奈都は両親と共にその病院へと運び込まれた。 しかしその後親族等と連絡がつかなくて困っているとのことだ。 その話を聞いて、一真はいつか彼女がした家族の話を思い出した。 両親はそれぞれ一人っ子で祖父母は皆他界している。そのため親戚付き合いはないが、両親はとても仲が良く自分は恵まれている―――――そんな主旨の話を聞いて、一真は自分が彼女に惹かれる理由はそこにあるのかもしれない、と思った。 自分にはない家庭の温もりを持つ彼女―――しかしそれを突然失った時、人はどうやって立ち直るのだろうか?
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