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河原奈都が目覚めたのは事故から丸1日半経った明け方だった。
一真はしばらく彼女を抱き締めた後、体を離すと頬や髪を繰り返し撫でた。
今までの関係性・距離感から考えると、彼女が不審に思ったかもしれない。それでも無事を確かめたかった一真は、無意識のうちにそうしてしまった。
しかし彼女はぼんやりとした表情のまま、特に何も言わず、されるがままにしていた。
しばらくすると、一真は我に返ってナースコールを押した。
医師や看護師が来たので、一真は一旦退室する。
医師が出てくると奈都の容態を確認し、日中検査することを聞いて再び病室へと戻った。
「…先生…私の体、大丈夫なんでしょうか?」
少し頭がはっきりしてきたのか、天井を見つめたまま彼女が尋ねてきた。
「あぁ…全身に打撲はあるそうだが、大きなケガはないようだ。頭を打ったショックで意識を失っていたみたいだから、一通り検査が終わったら帰れるさ。」
先程確認したままを伝え、一真が着席した時だった。
「…それじゃあ………私の両親はどこにいますか?」
ドクン
一真が最も恐れていた質問だ。
答えを引き延ばしたところで現実は変わらない。
けれども傷付いた彼女に追い打ちをかけるような事実は、できるだけ後回しにしたかった。そしてそれを知らせる役目を自分が負うのもこの上なく辛かった。
「………いるよ、病院に…」
何とか声を絞り出すように答える。
「…二人とも、亡くなったんですね……?」
言葉にした瞬間、彼女の瞳から涙がこぼれた。
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