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竿の行方を考えると内心泣きそうではあったものの、笑うことしか出来なかったのだ。
しかし微笑みも束の間。
水面が破裂したかのような轟音が鼓膜を攻めたて、竜巻のような水柱がクラウを掠めた。
体は硬直状態、しかし圧倒的な存在感に目線だけを隣へ移すと、ぽっかりと空洞。
クラウは瞬きの後、ソレを再確認する。
空洞にさえ思えた暗闇の淵には鋭利な牙。
そこにほつれた糸に引きずられて上陸したのは、先ほど永遠の別れを交わした筈の最愛の釣竿。
さらに視線を上に向ければ、クラウの映るつぶらな瞳が二つ。
クラウの視界の隅に、未だ池と繋がって、鱗で光る尾のようなものが見えた気がした。
というのも、瞬きをした数秒のウチに空洞はクラウの視界を埋め尽くす勢いで迫ってきたからであった。
「ぎゃぁぁああぁあ!?」
「へぇ。……じゃな……すか」
クラウの叫びにウェルナクスの呟きが紛れた。
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