ニートな魔王の異世界遊戯

魔王様、異世界へ飛び立つ

最上級型転移魔法『異世界転生』

今まで名のある偉人達が、死に物狂いでその魔法を研究し、数百年掛けてやっと七割程度まで完成させ、これ以上の完成は見込めない……と断言させた程複雑で困難な魔法。

後にも先にもこの魔法を完成させる事は不可能と言われるこの魔法は、その困難さ故、主に伝説や童話と言った架空の世界によく使われる。

――と、本に書いてあった。

だが、今ここにもはや伝説とまで言われるその魔法を、たった一目で見極め、数分で完成させた男がいる。

誰かって？俺に決まってるじゃない。

なんたって魔王だし、不可能はないんだよフハハハハ!!

「有り得ないなんて事は有り得ないのだよ」

と、どこぞの錬金術師が口にした台詞を口ずさむ。

嘗ての偉人達が何百年という時間を掛けて造り上げた魔法をたった数分で完成させてしまったのだ。

偉人達もビックリして開いた口が塞がらないだろう。

ともあれ、天と地をひっくり返すような大魔法を完成させた俺は、間違いなく世界の歴史やらギネスやらに一生名を残す事になるのだろうが……。

残念ながらそんな物にまったくは興味はない。

そもそもこの事が表沙汰になった所でその結果など、目に見えてはっきりしている。

魔王である俺がそんな魔法を完成させたなんて事が知られれば、批判や中傷の声が嵐のように世間を飛び交う。

それこそニートでチキンな俺のハートが音を立てて崩れ去ってしまうだろう。