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「う~ん……」
苦々しい表情を浮かべる。
どうしたものか。と、今現在進行形で存在し続ける問題に頭を悩ませながら、俺は無駄に広い玉座の間の台座に腰を掛けた。
そして、その問題の元凶――目の前で俺へ射殺さんばかりの痛烈な死線を送り続ける男を見て、大きな溜め息を吐き、間を少々開けて再び問い掛けた。
「……で、なんなの?」
「覚悟しろ『魔王』! 俺はお前を倒す男だ!」
「いや、倒すつっても俺なんもしてねぇし。マジで」
「何を今更!お前を俺の家族を、友達を、恋人を殺した!」
無駄に凛々しい声。
無駄に整った顔。
無駄にカッコいい身嗜み。
聞いててこっちが恥ずかしい厨二な発言。
この時代で、ましてやこのご時世で、さっきから社会的に痛すぎる言葉を吐き続けるこの男はどうやら俺を殺しに来たらしい。
そして今、少し困った状況になってます。
「いやだからね? さっきから言ってるけどそれ、世紀末にバイク乗り回してるようなうちの脳筋バカな部下共が勝手にy――」
「だから俺は、散っていった仲間の為、世界の人々の為にお前を倒す!」
「………」
まったく俺の話し聞く気ありませんよこの人。
さっきから人が一生懸命誤解を解こうと頑張ってるのに、一方的に因縁なすりつけてくるんですけど。
「あの、ね? だからね? 勇者くん。まずオチツケ。倒すやらなんやらはまぁいいとして、まずは平和的に話しあいをしてかr――」
「お前はこの世界にいちゃいけない!差し違えても絶対に倒してみせる!」
「ねぇまず人の話しを聞こうよ! さてはお前まで脳金バカなんじゃないだろうな!」
さっきからずっとこれの繰り返し、言っては遮られて言っては遮られて。
イライラが最高潮まで達していた俺は髪をガシガシとかきむしりながら顔を歪ませる。
人の話しを聞かないこの糞――男は言わずと知れた世界の救世主、『勇者』様。
人の聖域(自室)に土足でズカズカ入ってくるマジ迷惑な奴ら。
そしてあれよこれよと説明すらさせて貰えないこの俺、何を隠そう――
『魔王』なんです。
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