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「ヒョッコが、立派になりやがって」
ドザッ
ニヤリと笑いながら、大柄な、いや巨漢と言って良いその男は金貨の詰まった袋をテーブルに置いた。
オールバックにした髪はウェーブの掛かった長髪。
肌は浅黒く、ただでさえ厳つい顔なのに、右目を縦断する古傷がさらなる迫力を彩る。
これが泣く子も黙るハンターギルドの長だ。
ここは、砂漠に囲まれた都市、アマモシティ。
何もない街だ。
前世紀、栄華を極めた文明があったという。
人類はその栄華をその叡智と欲望の暴走をもって終わらせた。
【大破壊】
街の外にはバイオモンスターが彷徨き、今となってはどういうカラクリで動いているのか分からないマシーンが人を襲う。
人は今や前世紀の遺物に怯えながら、前世紀の遺物にすがり、へばりつくように生きている存在となった。
その中で、街は人がなんとか寄り添い生きていくためのオアシスだ。
自衛を余儀なくされた人々は、戦う力を身につけ、徒党を組み、前世紀の風習に則り、組織は“カンパニー”と呼ばれた。
カンパニーは、街の外の脅威の排除だけでなく、やがて、開拓者となった。
そう、世界は広い。
かつて狭いと云わしめた世界は一瞬にして寸断され、広大な大地が未開の地に戻った。
地図は失われ、未だに未知の都市が、カンパニーによって発見されることも珍しくない。
ここはアマモシティ。私はこの砂漠に囲まれた街で育った。
小さい頃から、旅のハンター達の武勇伝を聞いて育った私が、カンパニーを結成したいと願うのは自然の流れだった。
そうしたヒョッコからベテランまで、様々なカンパニーを取り仕切るのが、このハンターギルドだ。
ギルドは街の外にでる危険因子をカンパニーに排除させる。
見返りは奨励金。
時には高額の賞金が懸けられる危険な奴の討伐依頼もある。
そうした報酬は、街が運営する預託金によって賄われている。
そして、目の前に居る強面のおっさんこそ、カンパニー達を束ねるギルドマスターなのだ。
「もってけ、報酬だ」
私は金貨袋を受け取ると、受取書にサインをした。
「いいか、ヒョッコ。俺はお前みたいな奴をゴマンと知っている。短期間で成長した奴らをな。
大勢だ。
自分を特別だとは思うなよ?
神にすがるな、加護なぞねぇ、あるのは己の肉体と…」
「仲間だけ」
「仲間だけ」
彼は豪快に笑った。
「生き残れヒョッコ」
ギルドマスターは、優しげな顔をした。
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