第一章 キャンペーン

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その日、私はいつものように、荷物運びの仕事をしていた。 働かざる者、食うべからず。それもそうなのだが、私にはどうしてもやりたいことがあった。 “カンパニー”の企業だ。 子供の頃からハンター達の武勇伝を、旅の話を聞いて育った私は、いつか“カンパニー”を興したいと思うようになった。 “カンパニー”の維持には金が掛かる。 どれくらい掛かるかは知らないが、皆、月末になると頭を抱えているのだから楽では無いのだろう。だから、こうして貯金をしている。 それにしても、今日の荷物は重い。 運んでいる荷物は4つ。人間大のズタ袋を4つだ。 宛先はDr.ミンチの実験室。 Dr.ミンチは、なんでも蘇生術の研究をしてるとか。 あの人は不気味だし、人の話を聞かないから会話が成立しないし、なんか苦手だ。 でも、ハンター達は大変お世話になっているらしい。 なんとか実験室に着くと、重かった荷物とおさらばすべく、ブザーを鳴らした。 Dr.ミンチは苦手だが、受取印を貰わないことには仕事を終われない。 しばらくすると、ヒョウが出てきた。 ヒョウ…人の言葉を解するバイオ生物。 ヒョウは荷台代わりのソリに回り込むと、ズタ袋を器用に背中に載せてスタスタと4往復。 そして、押せと云わんばかりに口にくわえた判子を付きだした。 Dr.ミンチのハンコ、それは本物じゃないかと疑りたくなるような、弾性のある親指の形をしている。 もちろん拇印同様、押すと指紋が写る。 「はい、確かに」 ハンコをヒョウに返し、軽くなったソリを引っ張り、帰路に着く。 砂だらけのアマモシティ オアシスに依存し、オアシスを守る街 ふと目をやると、ナツメヤシに、ガラクタに、テントに、そこかしこに張り紙が貼ってある §§§§§§§§§§§§§§ 【起業キャンペーン】  ・カンパニーを立ち上げたくても資金がないあなた  ・やる気はあるのに腕のないあなた 今、起業すると、3大特典が付いてくる  その1:初期費用0&社員の手配無料(※)  その2:レンタルタンク貸出無料(※)  その3:期間内に『ごろチーフ』討伐で、なんと戦車をプレゼント(※) まずはご相談を       ハンターオフィス ※ただし…《判別不能》…ノークレームでお願いします §§§§§§§§§§§§§§ 「こ、これは…」 願ってもない話だった。 私はすぐさま配達所に戻り、ハンターオフィスへと向かった🏃
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