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困惑しながら、私は首を振った。
「いや」
「嫌じゃない。授業に戻って、加瀬谷千鶴に頭を下げろ。そして、俺たちに話しかけるな」
「あの子を傷つけたなら、謝ってもいいよ。だけど、航吾たちに関わるななんて、意味も分からずに言うこと聞けない」
「頑固だな。昔通り」
「何か事情があるんでしょう。教えてよ、私に出来ることがあれば……」
「ない」
「……………」
「絢乃には、何も知られたくない」
航吾は唇を引き結んで、苦しそうに目を伏せた。
何故だか―――。
その顔に手を伸ばして、抱きしめたい気持ちになった。
同時に、触れたら壊れてしまいそうに見えた。
こうちゃん。
この時、大声で言えば良かったね。
大丈夫だよ。
私は強い女だから。
何があっても、何をされても、傷ついたりしないんだよ。
貴方の傍にいても平気だよ。
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