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かあっと赤面して、慌てて身を離した。 「ご、ごめん……!口ついた……!」 変な汗を掻きながら、さっと彼を見上げる。 航吾は耳たぶを抑えて、真っ赤になっていた。 「こっ……」 あまりの意外さに、目を丸くしてしまう。 教室では一人で、冷たい空気を纏っていたのに。 かわいいくらい、照れた顔をしていた。 「ごめ……」 「……………」 恥ずかしい沈黙が、二人の間に降りる。 意識するような空気が互いに伝染して、私も赤い顔でうつむいた。 アメリカにいた頃は、頬にキスくらい、友達の間でもしてたけど。 日本じゃ、特に航吾じゃ、その習慣はないだろうな。 「まったく……」 深く息を吸い込んで、航吾はしかめっ面に顔を戻す。 目許が少し赤いまま。 「……そそっかしいな、君は」 「耳にちゅうしちゃったの怒った……?」 「人が話題を変えたのに、話を戻すな!」 ビシッっと指をさされて、私はまた恥ずかしくなった。 嫌だったのかな。相当嫌だったんだな……。 昔は腕に噛みついたり、べろ攻撃までしていたのに。 身長差がついたからだろうか。 男の子と女の子の体になったからだろうか。 不意の接触で、心臓が跳ね上がる。 意識してしまうんだ。 「――絢乃、俺たちに関わるな」 不意に、航吾が言った。 釘をさすように、冷たい声で。 目を合わせた航吾は、もう笑っていない。 「俺たちに関わるな」
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