第二章

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そうこうしているうちにドスリと男子生徒を乱暴に床に落とし、生徒が言ったのであろう方向へと向かってスカートをたなびかせながら走っていった。 --------マタ別ノ人カラノ視点-------- いきなり枢木翼が姉、枢木安見子のいる教室へと息を切らせて駆け込んできた。そして抱きついた。あぁ、あの二人はいっつもこうだ。校舎の棟が違うのに休み時間のたびに弟が会いに来る。本当にマメな……というより愛情で動くやつだと思う。 そういえば今は昼飯時だから、他の棟の違うやつらも来ているため別段不思議はないのだが。 今日の二人の弁当は重箱らしい。考えてみたらあいつらの家は父が資産家である。なんとも贅沢なやつだ。 「姉さま姉さま、今日の具合はいかがですの?」 「ふふ、朝から一緒だったじゃないか。大丈夫だよ」 姉が弟に優しく微笑みかけると弟は嬉しそうに寄り添う。 そんな二人であったが一人の女生徒が姉の安見子に用事でもあったのだろう、声をかけ親しげに話をしはじめた。しばらく私も暇であったので様子を見ていると、いつしか女生徒に重く暗い視線が注がれているように感じた。 それが最初は複数からの視線かと思ったが、その女生徒は恨まれるような性格の持ち主ではない。とするとそのような視線を投げつけるのはただ一人、弟である。 弟は楽しげに安見子と話している女生徒を穴が開くほど見つめていたのだった。ほの字というわけではない。姉のことを愛する枢木翼に他人にそんな感情を抱くことはまずない。憎悪や嫉妬心だ。 しばらくして女生徒が視線に気づいたのかそうでないかは確かではないがそそくさと去っていった。 すると翼が安見子に何か言い出した。あいにく教室が奇声やら、その他の怪しげな物音のため聞こえなかったのだがおそらく女生徒との関係を問いつめているのだろう。 姉の方は手慣れた様子で弟の頬に軽くキスをする。すると弟は首まで真っ赤に染め上げ嬉しそうに微笑む。弟の外見は清純で清楚なお嬢様のため、どこかイケない雰囲気がある。 しかしこれでご機嫌とりは完了、ミッションコンプリートだ。 ちなみになぜ私がこんなに冷静に見ていられるかというと彼らは毎日のようにこんなことを繰り返しているからである。不毛でしかない。 おっと授業が始まる、これにて私は失礼。
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