繊細

2/9
前へ
/60ページ
次へ
ジリジリと陽射しが強くなり、川に人が増える頃、商店街には屋台を所々に設置されていく。 小さな駅前通りにある店の窓には、祭りのポスターが貼られだし、駅の正面の少し広くなってる場所には大太鼓と櫓がセットされる。 夏の始まりの1ページ 俺はそわそわする。 楽しい夏の訪れと共に父と兄が遊びにくるからだ。 この日も朝から公園に出かけた。 公園には小さな御堂があり、それを取り巻くように、ブランコ、シーソー、滑り台、ジャングルジム…とある。 俺はジャングルジムのてっぺんが好きだった。 四角ではなく、角ばった球体のジャングルジム。 そのてっぺんからは、国道が見える。 田舎だから車の通りも少ないが、夏は帰省関係か、若干増える。 それでも渋滞にまではならない。 俺は国道を見ながら、父の車に似た車を探すのが楽しかった。 夏のこの時期は、実際父の車が通るので、今日か…今日かと朝から見ていた。 そろそろ昼がくる。 婆ちゃんが作る昼飯は、夏はほぼおにぎりで、俺はそのおにぎりが好きだった。   おにぎりを食べにジャングルジムを下りようとした時、父の車が見えた。 俺は急いで下りて、駐車場にしている空き地まで走り駆け寄った。 小さな足で、一生懸命走った。 それでもやはり、迂回してたどり着く父の車には間に合わず、俺がたどり着く頃には、父は車を停めてトランクからバッグを下ろしていた。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加