プロローグ

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どこまでも広がる闇。   今、自分がどこにいるのかも分からない。   耳が痛くなるくらいの静寂に包まれている。   生き物の気配はしない。   この空間には、自分しか存在していないようであった。   (………またこの夢か)   自分で夢と認識してしまうほど、最近はいつも決まってこの夢を見ていた。   しかし、自分の夢ではあるのだが思い通りには動けない。   何も出来ず時間だけが過ぎていく夢。   喋ることも歩くことも出来ず、また食べることも寝ることさえも出来ない。   静寂の中、何も出来ずにただ立ち続けているだけなのだ。   ただただ時間だけが過ぎていく夢。 苦痛以外の何物でもなかった。  (これも一種の悪夢だな………)   その永遠とも思えるような時間に不安を覚えた途端、いつものようにこの夢は途切れた。
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