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猛がドアを開けると、そこには一人の女性が倒れていた。
その女性の全身は、山の中を駆け回っていたかのように泥に塗れていた。
よく見てみると、身体のあちこちには傷があり、かなりの時間が経っているのか血は固まっていた。
「大丈夫ですか!!」
猛は女性に声を掛けてみたが、意識がないのか返事はなかった。
猛の住んでいるマンションは住宅街にあり、子供が遊ぶような小さな公園はある。
が、目の前の女性のように泥だらけになるような場所はどこにもなかった。
また、目の前の女性の傷は、どう見ても転んで出来たりするような傷ではなかった。
服は刃物で切り裂かれたかのように裂けており、所々では焦げたような痕も見受けられた。
それに、傷だらけの女性が部屋の前に倒れていること自体、普通に考えればおかしな話であった。
女性の状態を見る限り、何かの事件に巻き込まれたことは間違いないだろう。
その前にこのまま放っておけば、他の住人が気付いてしまい大騒ぎになってしまう。
(………とりあえず、このままにしておくのは幾らなんでもやばいよな)
自分の部屋の前に女性が倒れているのを放っておくのは良心が痛む。
猛は傷だらけの女性を手当てすることに決め、女性を担ぎ上げると部屋の置くのベッドまで運んだ。
しかし、いかに女性の身体であろうとも、脱力したひとを運ぶのは男の猛でも骨の折れる作業であった。
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