1.炎

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「うおぉぉ!嘘だろ!?ちょっと目を離しただけじゃんよ!!」 狭い台所、神川 瞬が大学へ通うために借りているアパートが今、火災の危機に陥っていた。 ドン!ドン!ドン! 「おい!瞬!開けろ!!」 瞬が目前の熱気に嫌な汗をかいていると、玄関から聞き覚えのある声が響いてきた。 「チッ。なんて間の悪い……」 舌打ちとともに呟くと玄関へ走る。 「誠次か!悪いが昨日大負けしてな!来月の給料日まで待ってくれ!!」 握り拳の触れるドアから聞こえた瞬の怒声に、野々村 誠次は唖然とした。 こんな時までこの男は……。 ガツン!!と、誠次は扉を蹴る。 「んなこと言ってる場合かよ。お前またやりやがったんだろが!とりあえずここ開けろ!」 扉の奥から「うっ」という呻きと同時、鍵の開く音が漏れる。 「入るぞ」 誠次がドアを開けると、途端に有害そうな黒煙とともに強烈な刺激臭が鼻を突き刺す。 煙の先ではフライパンが火柱を上げているところだった。 「……」 誠次は無言のまま玄関の靴棚脇にある消火器を持ち上げると、慣れた手つきでフライパンを鎮火した。 「一応聞こうか。何してたんだ」 誠次は振り返るとあらためて瞬を睨む。 対して瞬は笑顔で舌を出した。
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