◆夜と朝の間◆

「痛え……」

単身赴任の父親と看護師をしている母親。

普段は母親と二人の生活なわけだけど、仕事に忙しくしてる母親とはほとんど接点のない生活をしてる。

引きこもり始めた当初は、同情でもしてくれてたのか大人しく見守ってくれてた母親も、夏を迎えるころには「いい加減に普通の生活をしなさい」とか「せめて予備校に行くとかバイトをするとか家事をするとかできないのっ？」と口うるさくなったものだが、今となってはもう何も言ってこない。

お互いが、空気みたいな生活。

同じ家に居ながら、日中仕事に行く母親とはほぼすれ違いの生活をしている。

母親の休日、ごく稀に顔を合わすことがあっても、俺からは挨拶すらしてねえ。

母親にすら、本当は会いたくない。

いや……、むしろ母親にこそ、会いたくねえんだ。