辺境遠征(後編)

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 そのため、エタハ村での竜の襲撃は最初から予想されていた展開だった。  テレーはワルトがエタハ村に到着する頃を見計らって伝令カラスを飛ばし、テサ基地の天候から応援部隊が村に到着するまでにかかるおよその時間を割り出して知らせた。  ワルトはこのテレーの情報に加え、エタハ村の天候も考慮に入れて部隊の到着時間を再計算し、クルト二等兵の実家へ向かうと最終的に決めた時間をテレーへ伝えたのである。  ワルトは瀕死(ひんし)の仔竜が突如現れたこと、テレーとスキッダルと協力して西の沼地で野生竜を退治したことなど、順を追って説明していく。  ただ、野生竜に襲われる直前にあったエリーとのやりとりについては一言も話さなかった。  仔竜の存在は、会議の参加者の間にどよめきをもたらした。  これまで、野生竜が不明者を捜索していた警隊を襲った理由は謎に包まれていたのだが、捜索した者の中で初めて生き残ったワルトの証言で、竜の襲撃が何者かによって故意に引き起こされた可能性が出てきたのである。  何者が、一体何のために竜を使って襲撃させたのか。  理由は不明だが、とにかく一連の襲撃事件の犯人を追うということで、全員の意見が一致した。  襲撃事件の犯人は恐らく、失踪事件についても何らかの鍵を握っているはずである。
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