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「ずっと、考えていたんだ。仔竜はどうやって村まで運ばれたのか、ってな。子どもといっても、竜は重たいだろう? そう簡単には運べないはずなんだ」
ワルトはひと呼吸をおいてから、話を続ける。
「俺が仔竜を見つけたのは、風に舞った竜の羽根を見つけたからだ。その時は羽根に気を取られていて気付かなかったが、今思えばあの風はとても不自然だったように思うんだ。 自然に吹いた風じゃなく、何かが起こした風……。例えば、竜の羽ばたきで起きる風とか、な」
話を聞くうちに、テレーも真剣な顔つきに変わっていた。
ワルトは、仔竜は別の竜によって運ばれたのではないかと予想している。つまり、竜の襲撃は竜使いの手で引き起こされたと言っているのだ。
それもただの竜使いではなく、仔竜を狩るほど技術に長けた者によって。
それが意味するのは、エタハ村の住人に襲撃事件の犯人がいるかもしれないということである。
「もう一度、村の人に詳しく話を聞いてみる必要がありそうだね。仮に犯人が村の人でなかったとしても、軍竜でもなければそう遠くから村まで飛んで来られないはずだよ」
テレーは、やると思い立ってからの行動がとても早い。
「すぐに大佐に報告して、周辺の飛竜台で不審な竜使いが目撃されていないか調査をお願いしてくる!」
今出てきたばかりの本部の扉に向かい、テレーは踵(きびす)を返した。
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