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桜色の長い髪をストレートに下ろし、頭には桜の髪飾りを付け、紅(べに)色の両目と紅白を基調とした少し風変わりな巫女服を纏っている少女の姿は、黒を基調としている創主とは反対の位置にいるような出で立ちであった。
創主の隣に座った少女は創主にお盆を差し出す。お盆の上には小皿に乗った小さな桜餅と湯のみが用意されていた。
創主はひょいっと桜餅の一つに手を取ると、そのまま一気に口に放り込んだ。
「むぐむぐ……んぐ。美味い!どうやらまた腕をあげたようだね?桜華(おうか)」
「いえ、まだまだ貴女様が作るものには適いませんよ」
桜華と呼ばれた少女は少し照れた表情を浮かべながら答えた。
「いやぁ……最初の頃に比べりゃかなり上達しているよ?こりゃうかうかしているといつか追い抜かれてしまうかもね?」
「それは褒め過ぎです。私(わたくし)はまだまだ未熟者です。それに、創様を追い抜くなんていう無礼なことはしたくはありませんから」
「まったく、桜華も頭が固い子だねぇ……。桜華が私を追い抜いたら、私も桜華を上回る技術で更に追い抜く!!そしてそれを桜華が目指してまた私を追い抜くよう努力する!!……抜きつ抜かれつが世の末だ!!相手に気を使わせてそこで止めてしまったら、それまでなんだよ?」
「なんか仰ってることが妙に人間臭いですよ?」
「いいんだよ!!だいたい神様は基本人間臭い奴等が多いからね。変に偉ぶるなんてナンセンス!!いくらこの世界で一番偉い神だろうが、私にゃそれは似合わないだけだね」
創主はぶっきらぼうに言うと、桜華は「創様らしいですね」と答えた。
この創主の隣に座る桜髪の少女の名は『時空桜華(ときぞらおうか)』。創主の側近として仕える存在にして、数多に存在する神々の一柱である。
元は神でもない存在であったのだが、創主によって神名を与えられたことにより、神の一柱となった存在である。
桜華は時空郷で日々を過ごす創主の周囲の世話をすると同時に、創主からこの世の強大な生命の力の根元たる『存在の力』の使い方を学ぶ創主の一番弟子として創主の側に仕えている。
故に、創主のことは誰よりも一番理解しており、創主の心を傷付けるような存在(もの)があれば一切の容赦もせずその存在を滅ぼそうとする従順なる従者としての顔も持ち合わせている。
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