暇を持て余す神

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 創主と桜華の会話に度々登場した『開花(かいか)』や『海(かい)』、『沢(たく)』と呼ばれる者達だが、彼等は『ムーン機関』と呼ばれる組織の者達で、創主と同じように様々な次元世界を旅する組織である。  創主自身も彼等と何度か会っており、特に彼等の総帥とも言える『夜月開花』は、創主や桜華にとって古くから付き合いのある親友である。 「うーん、久しぶりに機関の連中に会うのも良いけど、アポ無しでいきなり機関に来ると連中は大概って言っていいほど妙な緊迫感を抱くからね~」 「まぁ、機関を一番に総括する人物の友人となると、皆さん緊張してしまうのでしょう」 「前にアポ無しで来たら、ロロちゃんなんか物凄く緊張してたよね~。緊張のし過ぎで、声が震えて何言ってんのか分からない状況だったし」 「沢様に至っては素数をずっと数えていましたね」 「ユナちゃんくらいじゃない?いつも通りに振る舞っていたのは」 「彼女は基本無口ですからね。それに、一応ですが大将の娘という肩書きもありますし」 「何だい桜華も結構酷いこと言ってんじゃん!!」 「創様程ではありませんよ?」 「……っか~!!桜華も腹黒いこと言うようになったよねー!!まったく誰だよこんな腹黒い娘(こ)を育てたのは!!……私だよ!!」 「いい加減辞めませんか?その一人ボケ突っ込み」 「ほっとけ!!コレは私のある種のポリシーだよポリシー!!」 「そんなポリシーは寂しいだけだと思いますよ?」 「だって誰も突っ込まないじゃん!!……変にボケたら、ボケたでカケラ世界の彼方から桜色の核兵器がブッ飛んでくるしさ」 「突っ込まれるだけでも良いじゃないですか?」 「突っ込みにも限度っちゅーもんがあるでしょ!!限度っちゅーもんが!!」 「彼女は多分創様が不死身であることを理由に、手加減してないだけだと思いますよ?……ほら、あの方々の間では変な手加減は自殺行為ですから」 「それを言われてしまったら、元も子もないよ桜華……」  創主と桜華はまるで主と従者の立場をまったく感じさせないような会話を徒然と語る。それはどこか『家族』というものを彷彿させる程の気さくなものである。  暇を持て余す始まりの神とこの世界に住むもう一柱の神の何気ない会話は結局日没まで続くことになり、創主にとってはこの上ない暇潰しとなった。
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