1章[時空郷]

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 世界は全て、ただ一つだけとは限らない。  異なる次元、異なる時空が幾つも広がり、それ等が全て異なる歴史と時代を築き上げ、巨大な世界を築いている。  単一の世界で生きる存在や、外部から閉ざされ、隔離された世界で生きる存在にとっては、世界の広大さを知ることはできない。それは、井の中の蛙と同じことである。  だが、同様に単一の世界に存在しておりながらも、異なる次元と時空を知る者にとっては、世界とは、広大な存在なのである。  幾つも広がる次元と時空の世界の中でも、誰もが辿り着く事が出来ない世界が存在する。  その世界は、次元と時空を管理する者達の技術を持ってしても、決して辿り着くことが出来ぬ絶対不可侵なる世界。  その不可侵なる世界の名は『時空郷』……。  全ての『存在』の始まりを生み出した『始まりの神』が住まう世界であり、世界に存在する全ての存在が存在し続ける為の力、『存在の力』が生み出される世界。  異次元空間に存在する世界で、遥かなる時空の境界に広がる美しき郷。  その世界を守るように、七つの世界が『時空郷』の外側には広がっており、七つの世界の名はそれぞれ、『人間界』『動物界』『仙人界』『妖界』『天界』『魔界』『幻想界』と呼ばれ、『時空郷』を含めたこれ等の世界は、『六星幻想時空界』と呼ばれ、通称『六星幻時界』と呼ばれる。  『六星幻想時空界』の『六星』とは、先程上げた『人間界』『動物界』『仙人界』『妖界』『天界』『魔界』の六世界を表し、『時空郷』の外側にまるで惑星のように点在し、六世界を線で結ぶと、それが六芒星の形状に形作られる故にそう呼ばれ、これ等の世界は『六星界』と称されている。  この『六星界』の内側に『幻想界』があり、『幻想界』の更なる内側に『時空郷』の世界が広がっている。  それはさながら、次元世界に一つの巨大な魔法陣が描かれたような世界とも言える。  もちろん、それぞれの世界の文明は、どの次元世界同様に、発展具合が異なり、特に人間界の発展度は、他の次元世界に存在する人間界よりも、より高度に、より優れた文明を発展させている。  しかし、それ程の文明を発展させた人間界でも『六星幻時界』の中心とも言える『時空郷』の世界に行ける者は、極僅かしか存在しない。
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