1章[時空郷]

4/5
前へ
/58ページ
次へ
 自身が如何なる存在であるかを理解した『始まりの神』は、世界という存在を生み出す為に二つの存在を創造し生み出した。それは、単なる戯れからきた行動なのか、それとも孤独を嫌った故の行動なのかは分からない……。  『始まりの神』はただただ、それが自身の成すべきことと思い、自身とは異なる存在を生み出したのである。  生み出した存在は、それぞれ『時空』を司る力と『天体』を司る力を持ち、世界という存在を生み出すのに、重要な役割を持つ存在。『存在』を司る力を持つ『始まりの神』を含め、彼等は後に『三大神』と呼ばれるようになるが、それはまだ先の話である。  この二柱と共に『始まりの神』は、『六星幻時界』の基盤を創り、『始まりの神』は二柱とは別の創造神、『六星神』をそれぞれ生み出した。  こうして、全ての『存在』の『始まり』である『始まりの神』は、全ての『存在』の母とも呼べる存在になったが、その余りにも強大過ぎる能力故に、新しく生まれてきた他の多くの存在から忌み嫌われるようになる。  『始まりの神』という偉大とも言える名を持ちながら、新しき神々からは『異忌神』と呼ばれ、人間達からは欲望の対象として標的にされ続け、気の遠くなる程の長い間、孤独を強いられることとなった。  自身に取り巻く孤独と絶望が、次第に『始まりの神』の性格を歪ませ、あらゆる存在を生み出す母なる『創造神』と、残忍で冷酷な性格を持った『破壊神』の二面性を持った存在へと変貌させてしまう……。  だが、そんな『始まりの神』を愛したたった一人の小さな存在が彼女の歪んだ性格を穏やかにさせたことが一時期あった。  しかし、人の持つ愚かしき欲望の果てに、『始まりの神』を愛した者は、彼女の目の前で、その命を散らし、短い生涯に幕を下ろした。  人間の持つ欲望の愚かさと醜悪さに絶望し失望した『始まりの神』は狂乱し自身の力を暴走させ、数多の異次元世界を何度も破壊しては創り直すという行動を幾度も繰り返し、その結果多くの神々と対立、他の異次元世界にさえ影響を及ぼかねない程の大戦争を勃発させることとなる。  この大戦争に参戦したのは、普通の神々だけではなく、天使・悪魔・妖怪・仙人・人間等々、『六星界』と『幻想界』に住む本来なら交わることのない存在同士が、『暴走する始まりの神を鎮める』という一つの目的の為に大同盟軍を結成し、傍若無人に力を振るう『始まりの神』に挑んだのである。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加