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話は変わるが、広大な境内を持つ時空神宮の総本部となる山の山頂部分に建つ総本殿は通常の神社の社と、巨大な岩山をくりぬき、そこに社をそのままぶち込ませ、無理矢理合体させたような奇抜な建て方をした社の二つよって形成されている。
それ故に、社の内部構造はまるでどこぞの迷宮(ダンジョン)のように非常に入り組み、それぞれ区域によって分けられている。
その内の一区である岩山部分と合体した神殿、『深神殿』の縁側に一人の幼い少女があぐらをかいて座っている。
断崖絶壁とも言える場所に設置されている縁側は、落下防止の為の欄干はあるものの、ほとんど吹き抜け状態の為、高所恐怖症を持つ者ならば、一瞬で気を失ってしまうであろう。……しかし、そこから見える景色はまさに絶景であり、世の絶景ファンがその景色を見れば言葉を失ってしまうであろう。
その景色を、少女はぼんやりと眺め続けている。
十代前後くらいの幼い容姿に少し日焼けした健康的な肌。ポニーテール状にしながらも床に這ってしまう程の長い黒髪は、先端に鈴が飾られた赤い大きなリボンがその髪を結っている。
景色を見つめる瞳の色は両目とも群青色。
その身に纏っている巫女服は紅と白ではなく、青と黒を基調しているが、何故か袖の部分のみが分離した特殊な形状をしている。腰回りには長い帯を巻いており、後ろでリボン結びをしている。
見た目からも幼く、奇妙な巫女服を纏った少女は、この神社の神に仕える巫女でもなければ、他の世界から招かれた客人でもない。……だとするならば、残る選択肢は一だけしかない。
「はぁ~……。まったく、毎日毎日暇な事ばかりでつまんない限りだね~」
何やら深い溜め息を吐くこの幼く見える少女こそが、『始まりの神』と呼ばれている存在。名前は『創主(そうしゅ)』である。
実に奇妙奇天烈な名前であるが、この名前は当然ながら別称であり、創主自身の正式名称たる真名はちゃんと持っている。
ところが、本人は自分の本名たる真名を決して他人には曝さないことをスタンスにしており、それ故に、『始まりの神』の別称ともいえる『創造主』の単語を略して『創主』という、なんの捻りもない安易過ぎるネーミングを自分勝手に付けてしまっているのである。
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