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今まさに天使が目を開き、老婆の姿を捉えた
もう駄目だ
あの老婆は助からない
天使は神出鬼没で、いつどこに現れるか一切わからない、ただわかることは
『見つかったら死ぬ』
と言うこと
天使は綺麗な指を伸ばして老婆に手を差し出した、老婆もそれに答えて経を唱えながら嬉しそうに手を出す―…きっと俺の声など聞こえなかったのだろう
いや、聞こえていても答えないはずだ、まさに天にも昇る気分なのだから
差し出された手を互いが繋いだあと、周りにいた人間は耳を塞いだ、勿論俺もだ
一切の音を遮断し、映像だけが視界から頭に入り状況を把握させてくれる
天使が口を開く―…
『あぁああああああぁあああああ!!』
まるで悲鳴のような長いshout、耳を塞いでも頭を寂れさせる声だ、この声のせいでいくつもの建物が震え、崩れ、人間が下敷きになったか
声と共に出される天使の唾液、ただの唾液ならば汚いだけで済む話だが天使の唾液は成分が恐ろしい
エデンの林檎、果汁100%だ
アダムとイヴがルシフェルという(堕)天使に騙され食べた後天界を追放されたとされる林檎だ、それを食べると神と同等の力が得られる、と神話で読んだことがある
今まさに老婆に降りかかるエデンの林檎果汁、空気に触れまるで矢のように鋭く、老婆の肌に刺さる
音が聞こえなくても安易に効果音などわかる
グシャッ グチャッと言うところか
エデンの林檎は人間には毒で壮絶な拒絶反応を起こす、これは神話ではなく目の前でこういう事が当たり前になっているからわかる
「ひぃいいいいぎゃあああああぁ!!」
断末魔のような声、天使の悲鳴が終わって油断してた、頭を叩き割るような老婆の悲鳴が指の間から入り頭に侵入してきた、周りの人間も油断してたのかショックで何人か死んでしまったらしい
きっとこの婆さんもお陀仏か―…
しかし違った
拒絶反応はしっかりある、肌の皮はまるで火に通した熟れたトマトのように皮と肉の間に空気の袋を作り、爛れ、髪は抜け皮膚が薄い額の皮からは沸騰した血が湯気をあげながら溢れ、目玉はまるでスーパーボールが跳ねるような飛び出した
一つ違うのは死なないことだ
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