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そのとき、その足元に、四台の真新しいミニパワーショベルが置いてあるのに気づいた。狭い路地などでの下水工事なんかに使われる小型のパワーショベルである。
なんとなく、アスカちゃんと四匹の子犬とだぶって見えた。親子のパワーショベル。
そんなつまらないことを思っていると、大型のトレーラートラックが現われ、二人の男が降りてきた。
「やや、四台も生まれてるぜ」
「これだけ大きなアパートだったもんなあ。さぞ食いごたえがあったんだろう」
「栄養十分ってか」
「四台ともよく働きそうだ。きっといい買い手が見つかるぞ」
よくわからない会話を続けながらもてきぱきとそのミニパワーショベルをトラックに積みこんでいく。
そして、最後に大型パワーショベルを載せると、どこへともなく去っていった。
その様子をずっと眺めていた私は、泥でよごれてもおらず、使われた形跡がなかったあのミニパワーショベルが、どうしてここにあったのかを想像しながら家に帰った。
〈終〉
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