途中下車

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 いつもとちがう駅でおりた。  なにか特別な用事があったわけではなかった。同じ電車で家と会社を往復するだけの毎日。気ままな一人暮らし。まっすぐ家へ帰らず途中下車したのは、単なる気分転換だった。  郊外と都心とを結ぶこの沿線は、その昔、私鉄会社が駅周辺を最初から整備された計画都市として開発・建設したものだった。  途中下車したこの駅周辺も、自分の家の近くと同じ形の街だときいていた。駅前に建ち並ぶマンション……。  しかし……。こんなにも似ているとは。  いや、似ているなんてもんじゃない。まったく同じだ。駅前広場に面する商店も、その名前も、何から何まで同じ……。  いくらなんでもこれはおかしい。途中下車したとは思えず、いつもの駅でおりてしまったのかと振り返って駅名を確認した。が、ここは紛れもなく違う街だった。  奇妙だった。いくら計画都市とはいえ、ここまで似ているなんて、どうも納得いかない。
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