途中下車

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 ためしにいつも寄り道している駅前の本屋に入ってみた。 「……」  おれは絶句した。まさか……。いや、なんとなくそうじゃないかという予感はあったのだが……。  まったく同じなのだった。店員までも見たことのある人だった。これはどういうことだろうか……。  本屋を出ると、近くの中華料理店に入り夕食をとる。ここもときどき来る店だった。やっぱりそっくりそのままだった。  メニュー、ポスター、テレビの位置、そして店員も……。  なんとなく居心地の悪さを感じた。  おれは考えた。どうしてこうも同じなのだろうか。一度店員に聞いてみようかと思ったが、なんだか聞きづらかった。だいたいどう質問すればいいのだ。へんに思われるだけじゃないか?  ラーメン定食を食べながらおれは思った。こんなに何から何まで同じだとすると……。ひょっとしたら、自分の家もあるかもしれないぞ。となると……その家には誰がいるんだろう……。
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