ストレスの蓄積

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 いつもの喫茶店で、俺は食が進まずフォークを置いた。 「ん? どした?」  鈍感な奴でも分かるほど、俺はへこんでいる。 「あのな、最近忙しかったろ?」 「あー、経理部の決済手伝いに行かされたやつね」 「お前は行ってないもんな」  総務部の第3課、課長と俺とコイツだけの課は、別名雑用課と呼ばれている。俺が経理部でこき使われている時、奴は部署ごとの部品補充リストを作らされていた。 「その間さ、休みも1日くらいしか無くて、大事な約束忘れて……彼女に振られた」  彼女の両親が用事で上京して来る日、食事を一緒にするハズだった俺は、爆睡して携帯にも出ず、完全に彼女を怒らせてしまった。  電話やメールも受けとってもらえない今、2年の恋は終を迎えそうだ。 「ふえー」 「そりゃさ、俺が悪いよ? でも話を聞いてくれてもいいもんじゃないか? こっちは経理部の奴らにネチネチ厭味言われながら仕事してんだからさ」  愚痴り出したら止まらなかった。  結局喉の渇きをおぼえて言葉を止めたのは、熱い紅茶が冷めきるほどの時間が経ってからだ。 「悪い、つい愚痴……」 「んあ」  俺はその時初めて気付いた。  こいつが人の話も聞かずに、人のパスタを喰っている事に。 「お前ぇ!」 「喰うの? いらないのかと思った」 「空の皿を返すなぁ!」 「お前話しこんでるから、いいかなぁと。じゃ、俺先に行くから」  奴は自分の伝票を掴むと、いつもは見せない敏捷さで店を出て行った。  俺のストレスは、みごとに奴への怒りに代わり、小さくなっていった。
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