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都心から少し離れた場所に位置する、ここ神居町は古来から豊かな土壌と清らかな水源に恵まれた町である。
自然を寵愛する町として広く知られ、町を囲う様に植えられた四季折々の植物達を一見する為だけに訪れる観光客もいるくらい、有名な町なのだ。
そんな『神の居する町』の閑静な住宅街から、この物語は始まる――。
◆◆◆
白壁を基調とした新築の一軒家。
2階へと続く緩やかな階段を若干駆け足気味で登った少女は、躊躇すること無く右側にある扉を押し開けた。
そこは六畳ほどの質素な部屋。
誰が見ても質素という言葉で括られるであろう面白味のない部屋の中には、パッと見ただけでも勉強机と簡易なベッドしか見当たらず、ハッキリ言ってしまえば生活感が感じられない。
そんな部屋の中に無許可で侵入した少女は周囲のモノには目もくれず、ふくらみが目立つベッドにずかずかと足を踏み鳴らしながら駆け寄ると、未だに頑張る目覚まし時計をOFFにした。
たちまち静けさに包まれる部屋の中。
静けさの中から、かすかに聴こえてくる穏やかな寝息に少女は呆れた様に溜め息を溢すと、心の中で呟いていた。
――またか、と。
そこから今度はムネいっぱいに息を吸い込むと、未だ惰眠を貪る部屋の主人に対して名一杯声を張り上げた。
「ちょっと、お兄ちゃん!?いつまで寝てるのっ!遅刻しちゃうから早く起きなさい!」
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