HAPPY BIRTHDAYは悲しい言葉

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 まるで爆音の様な少女の怒声に、さすがの主人も慌てて飛び起き、寝ぼけマナコで周囲を警戒する様に見渡していた。 「ななっ、なんだなんだ!?……あれ?あっ、なるほど。おはよう、美月(みつき)」  頬をふくらませて怒る少女の姿を認識した少年は、ようやく合点がいったのか、少女に対して穏やかな笑みを浮かべながら挨拶を交わす。 「うんっ!おはよう、お兄ちゃん。 って……呑気に挨拶してる場合じゃないよ!早く仕度しないと遅刻しちゃうよ!?私は先に行ってるからねっ!」  怒った顔は何処へやら、律儀にも笑顔で挨拶を済ませた少女……もとい美月は、慌てて踵(きびす)を返すと部屋から飛び出ていった。  たちまち静けさが戻る部屋の中。 数秒ほど呆けた表情で固まっていた少年……お兄ちゃんは急にハッとした顔で時計を見つめ、急いで身仕度を済ませると転がる様に階段を駆け下って行くのだった。  
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