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階段を駆け下って一階に出てみると、なんとも美味しそうな朝食のニオイが漂っていた。
その漂う美味しそうなニオイに反応したのか、お腹の虫が鳴ってしまう。
寝坊さえしなければ……と怨めしそうに朝食を見つめてみたが、今はそんなことをしていても意味が無い。
少年は台所を覗き込む様に顔を出すと、鼻唄を唄いながら洗い物をする人物に声をかけた。
「おはよう、母さん。ゴメン、今日は朝食食べられそうにないや!もう美月は学校に行っちゃった!?」
少年の言葉や表情からは焦燥した様子が窺えるが、お母さんと呼ばれた女性は意に関せず、愛息の姿を見つけると穏和な表情を浮かべて返答した。
「おはよう、陽太ちゃん。あらあら、そんなに慌てちゃって……美月ちゃんなら、お寝坊さんを置いて先に登校しちゃったわよ?」
母親の和やかな雰囲気に頬を緩めた、お兄ちゃん……陽太だが、TVから聴こえてきた時刻の読み上げに忽(たちま)ち顔が青くなる。
そこから、すぐさま食卓の上に置いてあった母特製弁当をカバンに詰め込むと『行ってきます』という言葉を残して、慌ただしく玄関から飛び出して行くのだった。
「陽太ちゃーん。今日は美月ちゃんの誕生日だから早目に帰ってくるのよーっ!」
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