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旅商の長は、村の代表が全く事態を把握していない事に驚き、自分の馬に村長を一緒に乗せると、村の外れへと連れ出した。
「こ……これは……」
木立が消え、荒れ野だった場所が穏やかな姿に変わっていた。馬上から見渡すかぎりに緑の平野が続き、何方向にも土の乾いた幅広い道が走っている。
「いやはや……村の方々がされたのだと」
茫然とする長老に、困惑した長が声をかける。
「村の……確かに村の者ですが……」
長老はカウカセスの小屋へと、長に頼み連れて行ってもらった。
「ああ……来られるかと、思ってました」
馬を降りた時に扉が開き、カウカセスがいつもの笑顔で現れた。
「精霊岩からの道が、到達したはずですので」
「セイレイイワ? それがあの岩の名前ですか」
旅商が笑顔で話しかけた。長老はまだ動けずに、馬の近くに佇み、二人を見ていた。
「ええ。精霊が護っているので、僕がそう呼んでいるんです」
「セイレイ?」
長もその言葉には驚き、笑顔が引っ込むと、立ちすくんだままの長老に振り返った。
「長老、セイレイとはいったい?」
「わしにも、なんとも……」
「ああ! そうですね」
戸惑う二人に、いつもと変わらぬカウカセスの声が掛けられる。
「皆さんは精霊をご存知ない。そうか、それで皆さんが不思議そうにされていたのですね」
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