彼女の足跡

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 彼女が生まれたのは、内乱が続く国の色街だった。  母親は遊女で父親は不明。周りもそんな子供ばかりで、彼女の境遇は、特別風変わりというわけでもない。  そして、物心がつく頃から仕事につくのも、当たり前の環境だった。  仕事は、男なら傭兵になり、女は遊女になる。  ただ、周りが当然と思う環境が、グラディスには堪えられなかった。幼い身体にその仕事は厳しく、身体的にも精神的にも傷をおう。  彼女は仕事の時、精一杯抵抗した。しかし、難無く組み伏せられ思い通りにされる。 「お前は聞き分けが悪いね。上手くやりゃあ稼ぎも増えるのにさ」  仕事あがりに、傷だらけで帰った彼女を見て、母親は呆れた顔をしてそんな事を言った。 ――こんな街、出ていってやる。  母親の顔を睨みながら、彼女は心に誓った。 ――それには強くならなくては。  何の力も無ければ、街を出たとしても同じ事になってしまう。世は秩序なく荒れていた。  彼女は男に思い通りにされるのが、堪らなく嫌だった。だから、男を払いのける力が欲しいのだ。
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