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彼が発見されたのは、村外れの小屋だった。
しかもその小屋は、前日までは無かったもので、村中が大騒ぎになった。
問いただそうにも、彼にはそれまでの記憶が無く、年齢も不明。少年と青年の間、10代後半位と周りが判断したが、名前以外は何も分からない。
しかし、当のカウカセスは冷静で、自分の身の振り方を不安がったり、生活用具など何も無い小屋を、不便とも思っていなかった。
「記憶が無い振り、をしているだけじゃないのか?」
そんな憶測が、男達の中で流れ始めた頃、村の女達はかいがいしく彼の元を訪れ、身の回りの世話をやきはじめた。
彼はそれを拒絶する事も、遠慮する事もなく、穏やかな笑顔で女達の中心にいる。
男達は、女達を家に閉じ込めたり、彼に文句を言ったりと、暴力までは振るわなくとも、カウカセスとの関係を悪化させていった。
そんな日が何日も続いた朝、カウカセスは村の長老を訪ねる。
男達の事と思っていた長老に、彼はいつもの穏やかさで、全く予想していない事を話しだした。
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