開獄

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   「相原、50m先の交差点を確認しろ。斉藤、車上からバックアップ………セレクターは連射にしておけ」  3人の陸上自衛隊員は、ゴーストタウンと化した繁華街をゆっくり進んだ。  国道に面するレストランの脇からふたりを見る岡崎は、ヘルメットから突き出るマイクに小声で指示を出す。片側1車線のせまい国道には車が無造作に乗り捨てられ、いたるところにゴミが散乱していた。  2月の新春にふさわしい冷たい風が街路を抜け、小雨が岡崎の頬を濡らした。彼は心の中でつぶやく。  なぜこんなことになったのか?なぜ、たかが1週間で世界がひっくり返ったのか?誰かにすべてを説明して欲しかったが、埼玉県庁に設置されているはずの『自衛隊治安管理本部』はおとといから返事がなかった。 .
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