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ティッドは村中を走っていた。
陽が西に傾き、空が赤く染まっている。
村人たちは、今日の疲れを癒やすために、それぞれ帰路についていた。
そんな中、ティッドはフェリスの名を呼びながら走っている。
いつフェリスが消えたのか。
気付いた時にはフェリスの姿は無かった。
いつもなら両手を振って「また明日ね!」と言いながら、笑顔を見せてくれるフェリス。
ティッドは、そんな笑顔が好きだった。
それが、今日に限って何も言わずに姿を消したのだ。
ティッドは嫌な胸騒ぎがしていた。
「まさか……そんな事ないよね……」
ティッドの足が止まった。
空を仰ぎ見て、今日のフェリスの様子を思い出そうとする。
何か思い悩んでいなかっただろうか。
思い出すのはフェリスの笑顔と、自分の世話をする時の困ったような顔。
他には、普段と違った様子は無かったように思える。
「フェリス……」
ティッドは再び走り出すと、フェリスの家へと向かった。
フェリスの家は、村外れにある小高い丘の上にある。
村一番の富豪で、両親は商いをしていた。
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