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薄暗い闇夜。
部屋の中にある全ての物が闇へと呑まれている。
だが対称的に、それらを照らす―――ゲームの発する人工光が部屋には存在した。
そしてその人工光は同時に、なんの変鉄もない俺の普通の髪型をも照らし出していた。
視力0.1、よって通常は眼鏡をかけているがゲームをするときに限っては外している俺「長臣永灯(ナガトミエイトウ)」は一つのジャンルのゲームにはまっている。
……今まで俺は様々なジャンルのゲームを購入し、クリアしてきたがどれもあまりピンとこなかった。
仮にここに一つのパズルがあるとするなら、たったひとつだけ当てはまらないピースが存在するような、そんな感じだ。
だが、かと言って俺のゲーム精神を歓喜させられるゲームがあるわけでもなかった。
……そんな世間体からは人気と称されるゲームを消費しているうちに、いつの間にか俺の中では『ゲーム』という存在が崩れ落ちる荒廃した高層ビルのように廃れていってしまっていた。
――そんなある日、俺はゲームに見切りをつけようと、ゲーム機本体と共に大量のゲームを売りに行こうとゲーム店に向かっていた。
そして迷うことなく俺は店員に数多のゲームを差し出し、金へと変えてもらう。
――鑑定待ち時間。
俺は特に期待しているわけではなかったが店内のゲームを物色していた。
……いやそれだと嘘になるな。
俺は若干、期待しながらゲームを物色していた。
――とその時、一つのゲームコーナーが目に留まる。
「ギャルゲー……」
そう呟いた俺は、頭のどこかで運命的な何かを感じていた。
そして俺はゲームの鑑定中だった事も忘れ、食い入るようにギャルゲーコーナーを物色し、気がつけば一本のそれを手に持っていた。
……もう『一番始めに買ったギャルゲー』のタイトルは忘れたが代わりにそのゲームの内容は脳に焼き付いている。
俺は美少女が映っているPSPの画面から目を離し、呟く。
「これがギャルゲー……」
――面白い。
それが全ての始まりだった。
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