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――月日は俺の予想を斜めにいく感じで早く流れる。
この前までは中学三年の三学期だったのに今、俺は高校一年入学式に出席している。
目的のない月日の流れは早い。
……君は『目的がない』とほざいているが、お受験戦争に参加するという攻略にも関わる、超重大な名目を忘れたのかい?と世界の天にいる神に仮にそう聞かれたなら、俺は迷わず首を横に振るだろう。
だが俺は、いや俺たち男は野球でいえば補欠という立場でそれに望む。
……つまり何が言いたいかというと、俺はというより高松高校に入学する『男子生徒』の俺たちは入学試験を受けていない。
これは高松高校校長の独断で決まったことらしく他の先生方も口を挟めなかったようだ。
理由は、解ると思うが男子生徒がただでさえ少ないのに入学試験でさらに減らしてどうする、ということらしい。
スルーパスだった。
そんなことが現実で許されるのかと問い詰められれば俺は何も言わずに、ただその場から脱兎のごとく駆け出して何も知らない一般人のふりをするだろう。
――腐った受験生とはまさにこの俺を指す。
などと入学式に参加中の俺は、人生の逃げ組の思考を頭の中で漂わせていたが、一番頭の中を占めているのはやはり攻略のことだった。
まず考えるべきはこの後のフラグ立てだ。
この後、ギャルゲーなら必ずや幼馴染みがいて必ず一緒に帰宅するのだが生憎俺は高松高校に通うのに一時間かかるのでお察しの通り、同僚なんていやしない。
当然幼馴染みなんているはずがない。
いたら逆におかしい。
……だからまずは土台をたてなければならない。
その土台とは『途中まで一緒に帰れる女子を見つける』ことだ。
……そのためにもまず『挨拶』という全てのフラグの原点にたつ行動を実行する。
出逢いの最初はやはり挨拶。
基本中の基本だ。
これはギャルゲーでも現実でも同じ。
だが……今日はやめておこう。
いきなり高校一年入学式初日から開幕パンチ、属性を決める行動を取るわけにはいかない。
ここはぐっと、欲しいものを見つけた人間が来週のお小遣いまで待とうという気持ちで我慢だ。
俺はそう計画を練り、入学式という名の儀式が終わるのを待った。
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