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悩んだ末(コンマ一秒)、俺は自己紹介を辞退することにした。
いきなり自分の属性を決めてしまっては後に響く。
まあ今日は乗り気ではなかったという理由もあるのだが……。
「……悪い、明日でも良いか?」
俺は少し控えめにそう言う。
ここで相手の反感を買ってしまったら元も子もない。
まあ『自己紹介を辞退する』という行動が反感を買う行為そのものなんだけどな。
「ん?ああ、なんだ。そういうことか。悪い、初日から口聞いちまって」
桐井と名乗った人物は誠実に詫びてくる。
……いい奴なのに、ちょっとばかり悪いことしちまったな。
「……大丈夫だ。また明日話そう」
俺は多少の罪悪感を感じながら、明日に向けて『挨拶』という名の伏線を貼る。
「おう、じゃあ明日な」
そう言い、桐井という同級生は自分の席に戻っていった。
お世辞にも自分の選択肢があっていたとは言い難い。
まあ明日、挽回すればいいか。
「お前ら座れ~」
その時教室のドアが開かれ、先生が帰ってきた。
……まあ後は妙なフラグが立つ前に帰るだけだ。
そして流れるように先生の話を聞いただけで、そのまま解散となった。
初日終了だな。
俺はそう思った。
一日目 了
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