第1章

2/27
前へ
/48ページ
次へ
あまりにも想定外の問題に直面しすぎて却って冷静になった ―というか考える気力を失ったのだが― ので、とりあえずヒゲを剃り、今は母紀子の作った卵焼きを食べている。 この味はいつもと同じなのに。 不思議なことに、生まれて初めて剃ったヒゲなのに顔を傷つけることもなく簡単にできた。ムダ毛処理と変わらないからだろうか。 「美味しいね、卵焼き」 ぼそりと呟くと、 「…あんた今日ほんとどうかしてるわ。なんか変なもん食べたんじゃない?」 薄気味悪そうに、母紀子は答えた。 どうかしてるどころの話じゃないんですお母さん。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加