神様の愛する神様

8/18
前へ
/67ページ
次へ
時雨はハッと息を飲む。そんな事、考えた事が無いのだろう。嫌、それとも考え無い様にしていたのだろうか。 「“普通の人間”には、私たちの世界何て理解出来ない。私たちもそれは分かっている。だって、昔からそれが“当たり前の事”だったから……」 「閖、お前は何が言いたいんだ?」 話の意図が掴めない時雨が、私に簡潔に言葉を並べる様に促す。私は漸く時雨を視界に入れる。 「でも、“昔からの絆”は今回は違う。私の近くに“人間の閑”がいる。でも、“たかが人間”なら誰も気にしない筈だよね?なのに、どうして閑は気にするの?貴方たちは……」 その質問には時雨は答えない……嫌、答えられないのだ。 私と閑の仲は、詮索しないと言う暗黙の了解が彼らの中にある。それは、産まれる前からの約束……。 敢えて触れて来なかった話題を私が振って来たので、時雨は困惑している。 “産まれる前からの永遠の絆の約束”なんてこの塀の中では言われているけど、私たちにだって、分からない事だってある。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加