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「すまない、閖。すまない」
答えられ無かった事を謝っているのか、それとも自分が“そう言う感情”を持っている事に対して謝っているのかは分からない。
……でも、ただ一つ分かることはある。それは――。
「時雨?時雨が謝る必要は無いんだよ?今のは、私の質問がいけなかったのだから」
私がそう声を出しても、時雨は申し訳なさそうにして私の手を握り締める。さっきよりも、強い力で。
それから暫くして、時雨はもう一度だけ私に謝罪の言葉を口にすると、自分の家に帰って行った。
私は時雨が帰った後、ぼんやりと漆黒の中で輝く黄金を、縁側に腰を下ろして眺めていた。
“すまない、閖。すまない”
「……違うんだよ、時雨。時雨に謝って欲しかった訳じゃないんだ」
そんな独り言を言った処で、彼には届かない。
分かっている。
けれども、私は知って欲しかっただけなんだ。
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