神様の愛する神様

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その声は夜の深い深い闇の中へ沈んでいく。 何処にも届かず、ただ閑の耳にだけ響く。 「許される事なら、ずっと彼女の傍に居たい」 彼は力強く、自分の願望を口にする。だがそれは直ぐに、自分によって否定されてしまう。 「でもそれは“世界”が許さない……許される事なら、彼女の不安を総て取り除きたい」 その自分の想いは、決し認められる事でも、許される事でも無い。 それは“世界”が許さない。 だから彼は、願うしかない。 “その日”が来ない事を、そして大事な人の幸福を。 「閖……俺は、“俺たち”は、何故この世に存在するんだ?何故、何故……」 誰も分からない、誰も届かない疑問はあっさりと、闇夜に呑み込まれてしまう。 「閖、俺はお前を……俺はお前を……いつか、そうなってしまうのだろうか?」 閑はそんな疑問を消し去るかの様に、首を左右に振り、自分の帰るべき場所に帰って行った。
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