桃 25歳 Ⅰ

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奥の座敷に上がりこむと、バイトの山崎くんがおしぼりとお通しをさっと持ってきてくれる。 迅速に対応するのが、ここの売りだった。 「こんばんわ。ピーちゃん今日はいいカツオが入ってるよ。」 「じゃぁ、今日も適当におすすめでよろしく。すぐにまこさんたちも来るから。」 「了解。そっちのお兄さんは?なに飲む?」 山崎くんはメモ片手に、聴くと大将の怒鳴り声が響いてきた。 「こらっ、山崎。ピーちゃんとこは全員揃ってからだ。さっさとこっちに戻って来い!」 「うへぇ。じゃ、また後でね。」 変な奇声を発して、山崎さんは大将のところへ戻っていった。 ここは、大将の趣味でやっているようなお店で、から揚げと新鮮な魚が売りだ。お鮨も握ってくれる。なのにリーズナブルでお財布に優しいのだ。 「さっきからピーちゃんって、桃のこと?」 「まこさん達がそう呼ぶから定着しちゃったんだよ。」 桃だから、最初はピーチだ可愛いとか言っていたくせに、途中から面倒臭くなってピーになってしまったのだ。全国の桃ちゃんに失礼なあだ名だと思うんだけど。 「ピーちゃんね。可愛いじゃん。」 「冬馬にかかればなんでも可愛いになるんでしょ。そうだ、好き嫌いは?変わってない?」
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