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秋風が吹く季節だった。
どうしても、こらえきれなくて。
つらくて、つらくて、顔を見ることすらつらくなっていた。
会えば笑わなければと思い、笑えば彼女の顔が頭をよぎる。
友達じゃ満足できなかった。
好きが大きすぎて、彼女になりたかった。
彼女がいる、彼の隣で笑うことがつらくなっていた。
だから、私は逃げたんだ。
もう、彼の口から彼女の話を聞くことに耐えられなかった。
私は自分のことしか考えていなかったのだと思う。
子供だった。
言い訳だったら、その一言で済む。
けれどそれは、彼を傷つけた言い訳にはならないと思う。
空が茜色に染まる時間。
近所の高台で、町を見下ろしながら私は電話をかけた。
初めて、私を女の子扱いしてくれた人。
初めて、男の子を意識した人。
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