桃 25歳 Ⅰ

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だからといって、今日から会社で嫌というほど顔を合わせるのが決定してしまった。 このギクシャクした雰囲気を何とかしないと仕事に支障がでる。それは、分かっているのだけれどどうしたもんだか。 性懲りもなく、時間が欲しいんだよなぁと考えていると、メールの着信音がなった。 実は引きとめられ、冬馬に手を掴まれている。冬馬を見るとメールを見ても大丈夫そうだったので空いている右手でメールを確認すると、店の名前だけが打ってあった。 しょうがないか。いくらでも言い逃れはできるけれど、今日の冬馬の目は逃げる事を許してくれない時の目だ。 「これから、打ち上げに誘われた。しょうがないから冬馬も行く?まこさん紹介するよ。」 携帯を閉じながら言うと、冬馬は満足そうに頷いた。 あんまり連れて行きたくはないけど、しかたがない。 近所の居酒屋の名前を伝えると知っているみたいだ。 「俺のアパートがこの近くなんだ。って言っても引っ越してきたばかりだけどな。」 そう言って歩き出すけど、手を放してくれない。 「ちょっと、手を放してよ。」 「嫌だ。桃は逃げるような気がする。昔はよく手を繋いで歩いただろ、昔に戻ってみたいでいいじゃないか。」 「よくない。てか、逃げないし。放してよ。」 この男は、相変わらず女の扱いを知らない。普通に肩をだくとか、手を繋ぐとかたいして意識もしてないくせにするんだ。
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