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指定された居酒屋はライブハウスから歩いて五分程で着く。
冬馬が離してくれないので、仕方なしに手を繋いで歩いた。
高校生の頃はこうしてよく歩いたっけ。この男はこれでその気がないから始末に悪かったんだ。
普通、男女の友達で手なんか繋がないのに、平気でするんだから。
「なぁ。」
しばらく無言だった冬馬が話しかけてきた。
「なに?」
「あらためて友達になろうぜ。一度高校時代のことはリセットしてさ。もう、七年もたったし、いいだろ?さっきも言ったけど俺、桃が好きだし。」
あらためて友達。思いがけない言葉だった。心の奥がふんわりと暖かくなる。
「………私が、かなり酷いこと言ったし、した気がすんだけどいいの?」
おそるおそる聞くと、冬馬はあのとろけるような優しい笑みを浮かべながら頷いてくれた。
「桃は悪くないよ。謝るなら俺だろ。ま、今日はよそう。せっかく会えたんだから。」
「…………わかった。」
口からつるっと出てしまいそうだ。
ねぇ、あの人はどうしてるのって。
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