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なんとなく、なんとなくだけど、私はあの人が今どうしているか解る気がする。
冬馬の雰囲気から、冬馬の傍にいる事は無いだろう。
でも、聞けなかった。
聞けば答えてくれるだろうけど、私の心がモヤモヤして、聞けない。
私は、冬馬をあの人の話をする事がいまだに嫌なのだと唐突に理解した。
結局、あまり話さないまま居酒屋に到着してしまった。
暖簾をくぐると、熱気とともにから揚げのいい匂いが鼻をくすぐった。
「いらっしゃい。おっ、ピーちゃん今日は彼氏連れか?兄ちゃん男前じゃねぇか。」
すぐに私を見つけ、大将が大きな声で笑った。
「彼氏じゃないよ。いつものメンバーが後からくるから。奥いい?」
そういいながら、奥にある座敷にどんどん進む。
「おぉ!いいぞぉ、ピーちゃん今日もから揚げいくか?」
打ち上げにはいつもここを使うので、すっかり常連になってしまっている。
ここの大将のから揚げは絶品なのだ。味がよく染みていて、柔らかい上に肉汁が滴りおちてくる。
何度か家で研究したけれど、大将のようにカラッとおいしいく揚げられない。
最近ではすっかりここでしかから揚げを食べなくなってしまっていた。
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